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第1回 特集記事 「危険体感型教育」 のすすめ

 -建設業の安全衛生教育の一層の充実を図るために-
飛島建設(株) 安全環境部 担当部長 中野喜明


 皆さん、「危険体感型教育」を知っていますか?
 建設業の安全衛生教育は従来、座学による教育が主流であり、 より一層労働災害の減少を図るためには、座学教育の着実な実施に加え、 安全衛生教育の効果に影響する「教育技法」についても、工夫が求められております。
 近年、建設業の労働災害の発生件数が大幅に減少したことで、元請の職員はもとより、 協力会社の職長や作業員の方など関係者が、災害に直面するという経験自体が稀なこととなり、 それが関係者の危険に対する「感受性」の低下を指摘する声もあり、 今後の安全衛生教育のあり方については、「危険の感受性に訴える教育」の推進がより多く求められています。

I.「危険体感型教育」とは

 危険体感型教育」は現在、建設業はもとより他産業においても導入が進められており、 民間の教育機関の中には、「危険体感型教育」を年間を通じて実施しているところもあるなど、 従来の座学教育とは違った、受講者の5感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)に訴える教育として行われています。
 「危険体感型教育」は、保護具などを装着し、安全を確保した上で、発生する可能性の高い危険を疑似体験し、 これにより、保護具や安全の大切さを再認識する教育であり、従来の座学中心の教育とは違い、 『目で見て触ってみてといった5感に訴える教育』をいいます。
 民間の教育機関の中では【安全体感教育】【危険体験・体感教育】などとも呼ばれて実施されている教育です。

Ⅱ.危険体感型教育(例)

 危険感受性を磨く新たな教育として脚光を浴びている「危険体感型教育」を実施している 民間教育機関の危険体感コーナーの一部を紹介します。

「建設機械・クレーンなどの災害」に関する危険体感型教育

運転席に乗車させ、側方・後方の死角を確認する。
01
重機械の死角範囲学習

「土砂崩壊災害」に関する危険体感型教育

膝下程度まで土で埋められただけで、身動きが取れなくなることを確認する。

01
土圧の学習

「墜落・転落災害」に関する危険体感型教育

正しい使用方法と安全帯の大切さを確認する。
003
安全帯の効果学習
この他の「危険体感型教育」を紹介すると、

安全帯ぶら下がり体感(一本吊り)

 実際にぶら下がってみて、装着位置が腰より高い場合は内臓を圧迫し、 低い場合は足方向に体がスッポリと抜けてしまうことを体感する。 体が水平に保てれば正しい装着。自己流に着けると効果がないことを学習する。

回転体 巻き込まれ危険体感

 ボール盤作業や丸のこ盤作業などで、義手が瞬間に巻き込まれる怖さを実感する。 人は手袋をすることで安易に手を出してしまう習性があることなどを認識させる。

玉掛け作業危険体感

 玉掛け作業時に安易にワイヤーをつかんで巻き上げさせると危険が大きいことを体感を通して学ぶ。 竹を持ってワイヤーで挟まれた時に、竹がパチッと割れた時の音と衝撃でヒャッとすることでその怖さを体感する。

Ⅲ.「危険体感型教育」のすすめ

  現場に存在する危険を具体的に示して、「見て、聞いて、感じる」という人間として当然のプロセスを踏まえ、 身近な危険を直感的に理解させ、危険感受性を高めることが、この「危険体感型教育」の目的です。
 安全活動のマンネリ化、若年者の経験不足などで発生する災害を未然に防止するため、危険事象を疑似的に体感させ、 体験者の想像力を刺激し、自発的な「気づき(危険有害要因の抽出等)」を促すとともに、 実際の作業場面へと具体的に発展させ、災害防止のための知識・技能の習得と安全意識の高揚を促すために、 この「危険体感型教育」は有効と思われます。
 ある建設会社では、外部の教育機関に、職長を中心とした協力会社の作業員を多数受講させて効果をあげていると聞きます。 現場でも実施できるメニューもあることから、安全教育にジレンマ、限界を感じている方がおられるなら、 「危険体感型教育」に取り組んでみてはどうでしょうか。



写真出典:建災防発行リーフレットより

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